アメリカの対メキシコ追加関税が発動とは?揺れる自動車業界と貿易協定の関係

メキシコ国旗



2017年から北朝鮮や中国とバトルするなど世界中の話題をかっさらった米ドナルド・トランプ大統領がまだ動き出しました。

かねてからメキシコ国境から入ってくる不法移民を懸念していたトランプ大統領は「壁」を築く計画を進めています。そのダメ押しとなる対策として「全輸入品の追加関税」を発動。

今回はその一連の流れから大打撃を受ける自動車業界、そして背後にある貿易協定にフォーカスします。


対メキシコ関税が発動された経緯

これまでホワイトハウスを通じた政府としての「声明」と、個人用twitterでのつぶやきによる「私的発言」と2つを使い分けるのがトランプ大統領の流儀。

つぶやきによる個人発言はプライベートの私的なものですが、大統領ともなると一挙手一投足が注目されるため政府内の議員たちも振り回されていることが推測されます。

2019年5月30日にそのtwitterで突然、

「メキシコからの全輸入品目に6月10日以降5%の追加関税をかける。その後も政府の移民対策が不十分であれば税率を毎月1%ずつ上げて最終的に25%にする。」

これに対してメキシコ・アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領はトランプ大統領に書簡を送って報復措置ではなく外交手段での解決を表明。

米国内では共和党・財政委員会のチャック・グラスリー委員長は「通商政策と国境の安全保障は別問題だ」と反対の立場を示しました。

そして2020年米大統領選に出馬を表明している民主党エリザベス・ウォーレン上院議員も「トランプ大統領のむやみにダーツを投げるやり方はだれの助けにもならない。ツイートによる政策は機能しない。」と批判。

その他にも全米商工会議所のニール・ブラッドリー副会頭は「誤りである」、全米製造業者業界もこれに対して「消費者に破滅的な影響をもたらす」と経済の先行き不安を嘆く声など米国内でも批判の声が相次いでいます。


アメリカが発動する理由

メキシコ国境地帯もともとホンジュラスなどの中米諸国は治安が悪く経済的な貧困家庭が多いことから自由な国アメリカを目指して入国する「移民入国」があとを絶ちませんでした。

昨年2018年11月に国境付近にあるティファナという街を目指す約1万人もの移民集団「キャラバン」がニュースで取り上げられましたが、彼らはさまざまな中米諸国の人たちで道なき道を歩き野宿を繰り返しながら2週間以上を過ごしている光景はまさに「天国」への階段に出来た行列のよう。

しかし、入国手続きを行っても入れるのは10人に1人という割合で、全員が国境を越えることができないため抜け道を探したりトラックに忍び込んだり不法入国する人も多いのです。

不法入国は別の話しですが問題は、表向きはグアテマラとの国境の警備強化や中米諸国への不法移民送還などでアメリカに協力していましたが、国境付近のティファナという街では、入国審査待ちで野宿をしないといけない移民のために市がテントを提供するなど支援を施している点。

おおむね従うような姿勢を見せているものの根本的な解決に注力しないオブラドール政権に対してトランプ大統領は業を煮やしており、かねてから大統領選に出る前からこの移民問題を解決することを公約として掲げていました。

トランプ大統領のこれまでの行動を見ると過去の経緯や背景にある歴史を無視する”改革派”なので「関税」という通商政策を利用したやり方は根本的な解決を目指すとともに多くの反発や歪みを生むことになるでしょう。

また、今年11月には米中間選挙があるため国民に向けたアピールや人気獲得のための作戦という意味合いもあると思います。

自動車業界や私達の生活への影響は

TOYOTAロイター通信によると昨年2018年の対米国への輸出額は2,650億ドル、対米国からの輸入額は約3,470億ドル。

これに対してさらに税を課すと言うことは輸入する場合は米国企業が増えた税率を支払うことになり、また国境警備や入国審査の予算も相当膨らむことが予想されるため米国にとっても同じくらい経済打撃を受けます。

それでは、私たち消費者目線で考えたらどのような影響があるのでしょうか。


コストが消費者に転嫁される

加盟国内で製造した部品の調達比率を引き上げる新NAFTAが発効されれば、単純に製造部品のコストが上昇します。

すると増大したコストはメーカーが一部負担したとしても消費者が購入する車両価格に上乗せされて販売されることになるでしょう。

すでに一連の騒動を受けてトヨタ自動車は米国の販売店に対して、関税発動でトヨタに部品を供給する主要取引先に最大10億7,000万ドル(約1,150億円)の負担増が生じると伝えています。

主要自動車メーカーの間では供給に対する費用を検証する動きが広がっており車両の出荷の一部遅延が検討されたり、米市場で販売される車の購入価格は最大3,000ドル(約32万円)ほど上昇すると見込まれているため、消費者にとっても大きな大打撃と言えるでしょう。

部品の価格上昇でトヨタ自動車に大打撃

対米輸出額は3,470億ドルでその約3分の1は乗用車・トラック・バス・車部品が占めていますが、もともと対米への生産拠点として各メーカーや部品製造など約715社が進出済み。

大手の自動車メーカー社の対米輸出台数を見てみると、

【トヨタ自動車】約18万台

【ホンダ】約12万台

【マツダ】約6万台

既に米トランプ大統領のツイートによって各社の株価が下落するなど直接影響を受けていますが、関税によって米国市場が頭打ちになれば各社のコスト負担は一気に増大。

業績悪化が続けば同国から撤退する可能性もあり現在のところその方針は発表されていませんが、仮にそうなれば現地の人間だけでなく日本人社員や本社の社員まで巻き込まれて人員削減の対象になったり人事異動が行われることになります。

「USMCA」貿易協定の存在

貿易協定2018年11月30日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われたG20サミットの場で「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」という自由貿易協定が結ばれました。

これは1994年1月1日に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)を元としており協定内容をまとめたのが以下。

①米国の酪農家にカナダ市場へのより多くのアクセスを与える

②自動車の製造における3国間で製造される割合を増加させる

③NAFTAに含まれていた紛争解決システムを維持する

今回の関税は完全に②自動車製造の割合を増加させることに反する政策であり、わずか半年でこの協定は事実上「無効」となってしまいました。

この②は3国間で製造された材料で製造された75%の自動車・トラックは、関税を無税で販売することができるものでしたが、NAFTAをはじめパリ協定からの離脱、環太平洋パートナーシップ協定の中止などこれまでの度重なる交渉や歴史的背景を無視した行動と言えるでしょう。

ここにトランプ大統領の狙いがあり、これまで過去の大統領が行った世界中の国と締結してきた条約や協定はアメリカにとって不利益であるものは排除しよう、と。

そのためには更なる交渉を行うより叩き壊して「0」にすることでまた新たに「1」から作り始めていくことができるのです。

追加関税の行方

走る車今回の追加関税をめぐる発言やツイートはまさに「寝耳に水」状態で、ターゲットにされたメキシコ政府は急な対応や措置に追われていると思います。

トランプ大統領は英国・メイ首相との共同記者会見の際に関税措置を取ることを明らかにしましたが、ツイートした5月30日から発効予定日の6月10日までわずか10日間。

現在も両国の閣僚級での交渉が進んでおりメキシコとしては穏便に済ませて解決したいところですが、トランプ大統領は米国の閣僚が納得したものに対して素直に「うん、分かった」という人物ではありません。

実際に中国と関税バトルを繰り広げただけに単なる脅しの可能性は低く、海外に流出してしまった企業を自国内に呼び戻し、世界中へのPR効果や米国内でのアピール効果もあることを考えると継続的に【交渉成立→決裂→交渉】とドロ沼化に発展していくのではないかと思っています。


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ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。