EU離脱を目指す「ブレグジット党」とは?イギリスが残留できない2つの理由

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イギリスとEUの約束の日「3月29日」は、イギリス側の離脱準備不足からいとも簡単に破られてしまいました。

そこで台頭してきたのは労働党でも自由民主党でなく「ブレグジット党」と言う、2019年4月に創設されたばかりの新党。

今回はブレグジット党とは?そして党首ファラージの人物像、予備知識やイギリスがEU離脱に躍起になっている理由をご紹介します。


EUとイギリスのブレグジット問題

「ブレグジットはいつ決まる?」でも紹介しましたが、2016年6月に英国でEU離脱の是非を問う国民投票が行われました。

そこで離脱票が残留票を大きく上回る結果となり2018年6月に英国議会でEU離脱法が可決


EU側との合意を目指した離脱協定案を巡り、国内外でさまざまな議論やヘッドラインが飛び交い一進一退を繰り返してきました。

なかなかEU側との協定案がまとまらず、またメイ政権が英国議会を掌握できないでいるとしびれを切らした議員たちがメイ首相に対して不信任案を提出。

これに対してメイ首相は「EUとの合意離脱が達成されたら辞任します」と発言し、多くの議員たちが確固たる意志を感じとりこの不信任案は否認されました。

しかし、離脱期限の3月29日が近づいても一向に進展がなくやむなく2019年5月まで延期するようイギリス側がEUに要請。

その期限はさらに延期され2019年6月→10月に至っています。

ひとまずは英国経済に大打撃を与えるEU側との「合意なき離脱」は避けられましたが、先行きは依然として不透明で、この一連の流れを見た国民の心境にも大きな変化があったようです。

それを裏付けるのが2019年2月に行われた英国社会研究センターの世論調査。

「いま、国民投票が実施されたらあなたは残留・離脱のどちらに投票しますか?」の問いに対し、

EU残留が約55%

EU離脱が約45%

2016年に行われた国民投票では「残留=約48%」「離脱=約52%」という結果でした。

離脱→残留に移った人が7%も減ったことになり、「残留派」と「離脱派」が逆転した形となっています。

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ブレグジット党とは

ブレグジット党(Brexit)は2019年4月に設立されたばかりのイギリス新党のこと。

欧州懐疑主義を掲げる右翼政党「英国独立党」の元党首であるナイジェル・ファラージが、ブレグジット問題によって分断され混乱している議会や、一気に支持率を失ったメイ首相率いる保守党の状況を受けて旗揚げしました。

党首のナイジェル・ファラージは何者?

生年月日:1964年4月3日
出生地:イングランド・ケント
出身校:ダリッジ・カレッジ
来歴:
イギリス独立党党首
欧州議会議員南東イギリス代表
自由と民主主義のヨーロッパ共同代表
Brexit党党首
wikiより引用

ファラージの家系はカトリック教会の弾圧から逃れてイングランドに亡命したユグノーのファラージュ家。

ファラージュ家と言えばアイルランド島で起こった「プロテスタント教vsカトリック教」の争いを黒歴史としていますが、ファラージ自体はドイツ人女性と結婚するなどEU地域に対して偏見を持たない人物であることが伺えます。

ダリッジ・カレッジを卒業後、大学には進学せず商品先物取引市場で鉛・亜鉛の取引売買に関わるなど早くからその商才を発揮し、ブローカーやフランスのリヨネー銀行など職を転々としていました。

ダリッジ・カレッジ在学中に読んだ「自由論」に感銘を受け、それ以来おなじ思想を掲げるマーガレットサッチャーの熱烈な支持者でもありました。

その後、保守党の党員として政治に参画しますが、保守党党首がサッチャーからジョン・メージャーに変わったのをきっかけに脱党。

数人の議員と共同で「イギリス独立党(UKIP)」を創設し、1994年に欧州議会選に出馬。落選を繰り返し、1999年に6度目の挑戦でようやく南東イングランド代表として欧州議席を獲得。2014年まで4期連続で当選しており、自由と民主主義のヨーロッパの共同代表を経て2019年4月に「Brexit党」を創設しました。

ファラージの特徴は何と言っても毒舌を交えたパフォーマンス力の高い名演説。

EU高官でもEU大統領だろうと痛烈に批判し、あとで罰金を払うようなこともありましたが今の混乱しているイギリス国民の心を掴むのはカリスマ性のあるファラージにとっては難しいことではなかったのかもしれませんね。

Brexit党のねらい

brexit①Brexit党が創設された一番の目的は「欧州連合(EU)からの早期離脱目指す」こと。

つまり、離脱推進派です。また党の公約についてファラージ党首は以下のように述べています。

「単一市場や関税同盟から完全に抜ける離脱を約束する」
日本経済新聞より引用




単なる離脱推進派ではなく「強硬離脱派」と言った方がいいかもしれません。

また、「今の政府や議会では離脱を実現できない」とメイ政権(保守党)や労働党を批判しています。

もともとファラージという男は批判や毒舌を武器に演説で人を魅了するパフォーマンスに長けた人。

メイ政権の保守党はもともと党内でも強硬離脱派と残留派が混在しているため、今回のブレグジット交渉が「失敗」という認識が広まれば必ずBrexit党に流れる保守党員がいるはずです。

また、どちらにも属さない浮遊票も取り入れることができれば台風の目となり、EU議会選を足がかりに英国の議会でも幅をきかせるようになれば二大政党の保守党・労働党を飲み込むことも夢ではありません。

ファラージ党首が当初の離脱期限3月29日を過ぎてすぐ創設した狙いはそこにありますが、継続して力を蓄えていけるかどうかは未知数。

その意味でも次回のEU欧州議会選挙が「試金石」となりそうです。

英世論調査で支持率1位に輝いた理由

5月11日に調査会社オピニウムによる欧州議会選の世論調査でBrexit党が支持率34%で1位を獲得。

【2位】労働党が21%

【3位】自由民主党が12%

【4位】メイ首相率いる保守党は11%
ロイター通信より引用

メイ首相が主導してきた英国側とEU側の離脱協議は当初2019年3月29日をもって離脱するはずだった予定から大幅に遅れており、2019年10月まで先延ばしになっています。

英国とEUの関税問題や北アイルランドを巡るバックストップ案も前進せずメイ首相に対する不信任案が出されることもありました。

Brexit党の躍進の裏にはイギリス国民のメイ政権に対する期待や興味が失われたことや、英国議会だけで解決できないことが多いため「欧州議会選挙」で議席を獲得することが最重要と訴えるファラージ党首の声に多くの国民が賛同したことにあります。

EU欧州議会選挙の仕組み

EU国旗いよいよ2019年5月23日~26日にかけて「欧州議会選挙」が行われ、秋には首脳陣を決める人事を控えその去就が注目される年になりそうです。

さて、前章で「Brexit党」のファラージ党首が欧州議会の議席を確保したのち、次第にイギリス国政に影響力を発揮していくでしょう、と紹介しましたが欧州議会選挙の制度について簡単におさらいしておきましょう。

欧州連合(EU)はご存知のようにヨーロッパの国々28ヶ国が参加しており独自の関税制度、通貨制度が導入されているため、これらの取り決めを行う組織が必要となります。

そのため、投票が義務付けられているベルギー、ブルガリア、ルクセンブルク、キプロス、ギリシャを含む各国から出された欧州議員候補に対してEU参加国の国民が投票。

国によってオーストリアは16歳、ギリシャは17歳と規定されている選挙権が異なりますが、その国の方針を重んじて個別で年齢・投票方法が設定され、任期は5年間と定められています。

選挙予定日は以下、

5月23日 オランダ

5月24日 アイルランド

5月25日 ラトビア、マルタ、スロヴァキア

5月26日 オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、リトアニア、ルクセンブルク、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン

そして各国には国の規模によって定められた議席数が存在します。主要国を見てみると、

ドイツ=96議席

スペイン=59議席

フランス=79議席

イタリア=76議席

ポーランド=52議席

英国=?

選挙日程からも分かるようイギリスは投票できないことになっていますが2014年時点のイギリスは73議席が用意されていました。問題はイギリスが完全にEUから離脱してしまった場合、欧州議会選挙からも外れてしまうため0議席となるのですが、ブレグジットが10月まで延期されたため、現時点では欧州議会選挙に参加する義務が発生します。

その場合、73議席もしくはそれと同様の議席が確保されるものと思われますが、現職の欧州議会議員ファラージ党首が再度出馬する意思を示しており、再選すれば間違いなく「Brexit党」が地盤を固めて英国議会においても大きな影響力を手にすることができるのではないでしょうか。

イギリスがEU残留に後戻りできない理由

イギリスがここまでEU離脱交渉が難航すると誰もが思わなかったかもしれませんが、一度国民投票によってGOサインが出された今引き返せない理由として2点が考えられます。

①イギリスとEUの対立関係や歴史的背景

②国民投票の結果を覆すことは民主主義に違反するため

まず①ですが、イギリスは覇権国として第一次世界大戦前からアイルランドを植民地化し、ヨーロッパの経済・金融の中心地とも言われ確固たる「イングランド帝国(現:グレートブリテン島)」の地位を築いてきました。

イギリスの歴史は常に国民投票とともに生きてきたわけですが、二度の大戦に見舞われ疲弊したイギリスは「自力での復興が難しい」と当時の国民投票で欧州連合に合流する意見が強まり、イギリスはEU(欧州連合)の前身となるECに1973年から加盟。

しかし、イギリスが欧州大陸と完全に合流したものと程遠く、常に欧州大陸と距離を取ってきた自国のプライドを呼び覚ますための「一時的な協力体制」に過ぎませんでした。

やがて、EU共通の通貨として「ユーロ」が登場すると、イギリスは経済成長が後退していたこともあり投機筋の仕掛けによって大きくポンドが暴落し通貨危機に。

しかし、その状況にあっても通貨の番人と言われるECの「ドイツ」からは助けもなく、さらに溝を深めるだけの結果となってしまいました。

このように長いあいだ歴史的に見ても欧州大陸国と確執があり、また現在のイギリスはヨーロッパ市場でも世界規模で見ても最大の金融市場を持っています。そして、イングランド大帝国としてのプライドを武器に完全に「離脱する」という意思は現在にも受け継がれているようですね。

②つ目は、先ほども挙げましたがイギリスの歴史は常に民主主義における「国民投票」と共に歩んできました。2016年6月の国民投票でついにGOサインが出されそれに向けてずっと動いてきたわけですが、離脱中止を求める600万件のオンライン署名について政府は以下のような見解を出しています。

「政府が国民に約束したことが履行されず、民主的な投票によって明確に示された民意がないがしろにされる。そうなれば、民主主義への信頼が損なわれる」
NEWSWEEKより引用

当初の離脱期限3月29日を前にロンドン中心部で100万人規模のデモがありましたが再度、国民投票を求めるデモ隊は「民主主義の敵」として一部の政治家からレッテルを貼られています。

2016年と現在では明らかに状況も違うしイギリスにとっては窮地に追い込まれている訳ですから、再び国民投票を行えば違う結果が出る可能性もあるわけで。

しかし、一度でも民意を覆す行動をとることがそれは国民に主権がある民主主義が揺らぐことになるし、国家としての信頼が落ちてしまう可能性は多いにあります。私個人はどちらを応援というのはありませんが、かの有名なマハトマ・ガンジーはこう述べています。

「不寛容は、それ自体が暴力の一形態であり、真の民主主義精神の成長にとって障害となる。」

解釈の仕方で受け取り方が異なるかもしれませんが、政府が民意に対して聞き入れない「不寛容」な傾向が強まることが、真の民主主義とかけ離れていってしまうのでは?とも考えられます。

まとめ

brexit③今回は突如と現れて英国の興味を一気にかっさらった「Brexit党」とは一体どんな党なのか?そして党首ファラージはどんな人物なのかについてご紹介してきました。

また、イギリスがEUに残留できない理由を2点ご紹介しましたが、その理由は以下。

①イギリスとEUの対立関係や歴史的背景

②国民投票の結果を覆すことは民主主義に違反するため

今後、新たに国民投票が行われる可能性が限りなく低いと思いますが、ますますメイ政権率いる保守党が弱体化していくことが予想されます。

いずれにしても混乱が続いている英国内においてファラージ党首率いるブレグジット党は国民の瞳に「希望の光」のように映ったことに違いないでしょう。


ABOUTこの記事をかいた人

ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。