ブレグジットとアイルランド国境問題/バックストップ条項を分かりやすく解説

ブレグジットとアイルランド



前回は、「イギリスEU離脱はいつ決まる?為替ポンドに与える影響を解説☑」で、

 

・イギリスのEU離脱とは?

・イギリスのEU離脱が為替に与える影響

 

という内容を解説しましたが、よく耳にするようになったイギリスとアイルランド(以下:Ireland)との国境問題にスポットを当てていきます。

 

Irelandとイギリスの地理・歴史から見えてくる両国の関わりについて分かりやすく解説します。




Back Stopとは

まず、この条項を理解するうえでイギリスとIrelandの両国の地理や歴史をおさらいしておく必要があります。

イギリスとの地理関係

まず、イギリスや英国と呼ばれている国は正式名称「グレートブリテン及び北Ireland連合王国」。

つまりイギリス本土とIrelandの北側に位置する北Irelandもイギリスの領土です。

北アイルランド国境

地図で見ると分かりやすいですが、この北Irelandの南北約500kmの国境地帯(地図:緑マーカー)には税関チェックや検疫所がありません。

 

そのため、たくさんの道路が通過しており、1ヵ月のあいだに何百万台という車が行き来しています。

 

Ireは第一次世界大戦後はイギリスの占領下にあり、返還されたあとも北Ireの6つの州(地図:赤マーカー)はイギリスの領地下に残ることを選択しています。

 

約50年に渡るイギリスとIrelandの歴史

歴史
紀元前55年ローマのユリウス・カエサルがグレートブリテン島(現:イングランド)を征服しましたが、その支配はブリテン島北部のスコットランドとIrelandには浸透せず、多くのケルト系民族が住んでいました。

 

ローマ軍が去ったあとはケルト系民族が分裂して小王国として残り、ゲルマン人などの侵略にさらされていましたが、イングランドのヘンリー2世が率いるイングランド軍が上陸しIreland王国を築きます。

 

その後、Irelandはイングランドとは別に独自の発展をしていきましたが、何度となくイングランドからの侵入を受けていました。

 

15世紀はじめに起きた「宗教改革運動」によってイングランドだけでなく全ての周辺国が影響を受け、カトリック教徒とプロテスタント教徒に分裂し、そこからいざこざが続きます。

 

最終的にイングランドがスコットランドと同盟を結び強大な力を手にしたことでIreland全域を植民地化し、一連の騒動がいったん終結します。

 

Irelandは長いあいだイングランドに植民地されてきましたが、19世紀末から20世紀ころにかけての第一次世界大戦下のさなか自治を要求する運動が高まり、1916年に大規模な対英反乱とIreland独立の宣言が行われ、それから約30年後の1949年に英連邦を正式に離脱。

 

その時に、プロテスタント教徒の多い北Irelandはカトリック教徒の多い、南Irelandと別れる形でイギリス連合王国に残ることを選択しました。

 

1960年にはプロテスタント教徒とカトリック教徒の紛争が起きますが、最終的に南北の行き来と国境を取っ払う和平交渉(ベルファスト合意)が結ばれました。

ベルファスト合意

バックストップ
1998年にイギリスとIrelandの国境付近にあるベルファストという町で結ばれた和平合意の一部の条項こと。

 

前章で説明したように、北Irelandと南Irelandの南北の行き来と国境を取っ払う和平交渉(ベルファスト合意)をお互いが守るよう設けた保険で「Back Stop=つまり最後の砦」と呼ばれます。

 

しかし、ここにきてイギリスがEUから離脱し、離脱と同時に関税同盟からも抜けてしまった場合、急きょ北と南の国境間に「国境検査」の税関チェックを導入しなければならないため、EUからの独立の進展と並行して問題視されているのです。

 

EU離脱とIreland国境問題との関係

ブレグジットとバックストップ
これまでの説明してきたようにイギリスから独立したIreland、そして北Irelandは南Irelandと分裂してイギリスに残留。

 

南北で起きたプロテスタント教徒とカトリック教徒の紛争の和平条約に盛り込まれた、国境に税関・検疫を設けない法案は、イギリスのEU離脱問題とともに再浮上しました。

 

なぜなら、北Irelandを含むイギリスは2019年3月29日にEUを離脱する予定ですが、Ireland(=南Ireland)はこれまで通りEUに残留するからです。

 

EU側の主張は、仮にイギリスがEUから離脱するとき「関税同盟」まで脱退しなければ、Irelandとの条項も解決するんじゃない?というもの。

 

そして、イギリスとIrelandの火種にならないよう、保険として以下の2つをBack Stop条項に盛り込む必要があると言っています。


・北Irelandの物品と農産物をEUの統一された市場にとどめ、EU基準に達しているかどうか確認する検査の必要性は完全にない

・イギリスは明確な境界線を回避する他の方法が見つかるまでは、EUの関税同盟内にとどまること

しかし、イギリス側は経済大国としてのプライドや、国民投票によって得た「経済的自立を目指す」という方向性を曲げられないことからその案を受け入れることができません。

 

その後、イギリスからBack Stopに関する提案が行われますが、何度も提案・撤回が繰り返されている状況。

 

最終的にイギリスのメイちゃん(メイ首相)が、

 

「北Irelandだけが移行期間終了後も、一部のEU規制を受けることになるだろう」

 

こう発言していますが、これには英国議会からも反対意見が出ており終着点がいまだ見えていません。

 

また、イギリスの今後の政治方針も定まっていないので、今後のスケジュールはこちら「イギリスEU離脱はいつ決まる?☑」で紹介しているのでそちらをご覧下さい。

 

今後の行方はどうなるの?

今後の行方
今後の行方は明確な方向性が決まっていないので、どちらに転ぶか分かりませんが考えられるのは以下の2点。


・イギリスがEU離脱と同時に関税同盟を離脱しても北Irelandだけ関税同盟に残り、EU規制をこれまで通り受けるので、南北Irelandの国境間に「国境検査」の税関チェックを設置しなくていい

・イギリスがEU離脱と同時に関税同盟を離脱して北Irelandも税関同盟を抜けて、EU規制を受けない代わりに南北の国境間に「国境検査」の税関チェックを設置する

 

どちらに転んでも北Irelandはあまりメリットがないように思いますが、紛争やイギリスとの決別など人種・政治・宗教的な絡みで衝突するのは避けて欲しいものです。



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ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。