親の体罰が禁止される法律の改正虐待防止法とは/どこから罰せられるのか?

子供たち



最近ニュースでたびたび目にする子供の死亡が相次ぐなか6月19日に親の体罰を禁止する「改正虐待防止法」が成立しました。

子供がトラウマになるような「しつけ」の仕方はもちろんアウトですが、知らずに法に触れてしまうと逮捕!なんてことに。

今回は可決された法律の概要とどこから罰せられるのか?についてご紹介します。


親による虐待が相次ぐワケ

「ママ、もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんからきょうよりか もっとあしたからは できるようにするから。もうおねがいゆるして ゆるしてください。おねがいします。ほんとうにもうおなじことはしません」

これは今年3月に東京都目黒区で虐待によって死亡した船戸結愛(5)ちゃんが暴力を受けたあとに書いたとされる親への手紙。

まだ記憶に新しい事件ですが5歳と言えばまだ年中~年長さんくらいでしょうか。

育児経験者なら我が子の5歳頃を思い出すとよく分かると思います。5歳は簡単な読み書きはできますが、こんな悲痛なメッセージを子供が書く姿や家庭環境を想像するとゾッとします。

こうした事件はここ数年のあいだにたびたびニュースで取り上げられ世の中の父・母がみんな歪んでしまっているかのような錯覚に陥るときがあるほど。

どうしてこんな事件が増えたのでしょう?そもそも昔はどうしてこんな事件が少なかったのでしょうか。

その大きな原因は”社会情勢”にあります。

生まれながらの子供の病気・障害による暴力は少数だと思いますが、ほとんどの場合が父母自身が幼少時代にされたトラウマや暴力を再現してしまうパターン。


そしてもう一つが社会的・経済的な不安によるもの。

日本は高度経済成長のあとバブルが弾けたのち、徐々に回復してきましたがサブプライムローン破綻などの経済ダメージを受けるたびにたくさんの失業者が生まれました。

こうした社会的なあおりを受けた家庭は負のスパイラルに陥り、父は我が子を目の敵にします。その受け継がれた負のスパイラルが時を経て、最近の事件に繋がっていると仮定すれば起点は今の団塊世代ということに。

家庭にダイレクトに影響する育児支援の法律・児童相談所が一体となって歯止めをかけない限り、2030年以降はさらに子供の死亡事故が増えることが予想されます。

体罰・虐待ラインはどこから?



子供が言うことを聞かなかったりゴネたりすることってよくありますよね。私も初めての子育ての時はしつけの勉強をしてなかったこともあり安易に叩いて罰するという事がたまにありました。

もちろん日常的にではなく年に2~3回ぐらいで、普段は愛情を持って接しているつもり。第三者から「暴力してない?」と聞かれたら「もちろん、してないよ!」と答えます。

💡しかし、虐待防止法が施行されたあとに該当していないか?と問われれば100%問題ないとも言い切れません。

そもそも子供への虐待とはどんなものがあるのでしょうか。

基本的には、

①心理的虐待

②身体的虐待

③ネグレクト

の3種類が存在します。

まず①は手を出さない代わりに子供を追いつめたり大声や罵声で恐怖に落とし入れること。他にも無視したり拒否的な態度を取ると子供の心の発育に大きな影響を与え、自己肯定感の低い大人になってしまいます。

②は叩いたり蹴ったり物を投げつけたり身体に直接痛みや影響を与えること。ニュースに取り上げられた幼児の遺体には必ずと言っていいほどアザやケガの跡が絶えなかったと言います。

③はカンタンに言うと「育児放棄」の状態。食事を与えない・学校に行かせない・子供を家に放置して出掛けるなど。近年、このネグレクトが急増しており、子供との関わりを絶とうとする父母の心理状態が強く反映されています。

この3つの「虐待」「しつけ」の違いは、そこに子供の自主性があるかという点。

大人の感情に任せて子供を支配・コントロールしようとする行為は、どんな状態であれ限りなく「暴力」に近いと言えます。

一方で「しつけ」は子供が自分の感情や行動をコントロールできるように落ち着いて説明する行為。

両者は子供が将来、大人になった時に健全な心を持って自立できるかどうかが大きな違い(=ライン)となります。

改正虐待防止法はどんな法律

可決までの流れ

日本では1990年代頃から児童への家庭内暴力が社会問題となりメディアに報道される機会が増え、民間団体による防止活動がはじまり次第に活発化してきました。

オレンジリボン運動の「児童相談所における相談処理件数」によると、

1990年度=1,101件

1996年度=4,102件

1999年度=11,631件

年々増加していることから「子供を守るための法律が必要だ」という世論が高まり、2000年5月に【児童虐待の防止等に関する法律】が成立して同年11月から施行されました。

しかし、その後も児童相談所への相談が減らない現状を受けて2019年6月19日の参院本会議で全会一致で「改正虐待防止法」に改められ、父母のしつけに対する体罰を禁止する事項が盛り込まれています。

概要

今回の改正にあたってポイントは以下の7点。

一、親権者は児童のしつけに際し、体罰を加えてはならない。民法の懲戒権の在り方は、施行後2年をめどに検討

一、児童相談所で一時保護など「介入」対応をする職員と、保護者支援をする職員を分けて、介入機能を強化

一、学校、教育委員会、児童福祉施設の職員に守秘義務を課す

一、ドメスティックバイオレンス(DV)対応機関との連携も強化

一、都道府県などは虐待した保護者に対して医学的・心理学的指導を行うよう努める

一、児相の児童福祉司に過剰な負担がかからないよう人口や対応件数を考慮し体制を強化

一、転居しても切れ目ない支援をするため、転居先の児相や関係機関と速やかに情報共有

防止法が実際に適用されるのは2020年4月~。

船戸結愛(ゆあ)ちゃんの事件にとどまらず千葉県野田市で栗原心愛(みあ)さんや、札幌市中央区で池田詩梨(ことり)ちゃんの事件でも問題となったのが「児童相談所」の不手際。

個人的にはやっと動いたか。という印象がありますが、野田市の事件で被害を訴える心愛さんのアンケートの写しを父に渡していたことが問題になりましたよね。

根本的に守秘義務が守られていないし誰が考えてもそんな事したらますますエスカレートすることが想像できるのに、ずさんな対応をしていたことが表面化した事件でもありました。

我が子を死亡させた父母は児童相談所に対して「しつけのためだった」と供述するケースが多く、学校・教育委員会・児童相談所の機能強化や設置促進が進められており対応に当たる専門職「児童福祉司」の確保と質向上が課題でしょうね。

体罰を受けた子供はどんな影響を受ける?

赤ちゃんそもそも体罰とはは子どもが持つ権利の侵害であって国際人権法でも家庭で暴力を振るうことを禁止義務付けています。しかし、現実には「しつけ」の名のもとに小さな子供たちは暴力を受けているケースがあります。

事件になるのは死亡した子たちが取り上げられていますがいま現在も多くの子供たちが叩かれたり心理的な戒めを受けている可能性は十分に考えられます。

それでは実際に幼少期に父母から暴力を受けた場合、子供にはどんな影響があるのでしょうか。


道徳的観念の低下

本来、教育とは子供が分からないことを大人の考え方を強要したりコントロールしたりすることではなく、自立性を尊重しながら教えていくものです。

ところが、大人の社会的不安や感情の都合で与える暴力は共感性や道徳的観念を低くする可能性があると言われています。

また親子の関係を傷つけ大人に対して誤った理解を示したり、お世話をしてる人間に対する愛情と尊敬の念を持って接することが難しくなるでしょう。

日本人は自己肯定感や自尊心が低い傾向にありますが、幼少期のトラウマによって子供は大人になってからも著しく自尊心が低く、人生に対して絶望感を感じたりアルコール中毒・自殺未遂を起こしたりする可能性も。

反社会的行為の増長

暴力を受けた子供は大きくなるといじめ・不正行為・家出・不登校や犯罪に手を染めてしまうケースがあることが判明しています。

さらに攻撃的で犯罪性のある仕事に従事することもあるでしょう。水商売や詐欺行為を繰り返す人たちは幼少期にトラウマを抱えている人が多い傾向にあります。

一番厄介なのはその子供が大人になって自分の子供が生まれた時に、自分が受けた仕打ちのように我が子に対して暴力をふってしまう可能性があるという点。

また、身体的健康にマイナスの影響を及ぼす可能性があり喘息・片頭痛・心臓疾患・肥満との関連性も明らかになっています。

児童相談所が強化される

相談今回の改正は野田市の船戸結愛ちゃんの事件に大きく影響されましたが、具体的には児童相談所や学校における子供の緊急安全確認が行われました。

児童相談所のさらなる強化が求められているなか、以下の取り組みの徹底が各市町村・学校・設置者に対して行われています。

・学校等においては、児童虐待の早期発見・早期対応に努め、市町村や児童相談所等への通告や情報提供を速やかに行うこと ・児童相談所においては、通告や学校等の関係機関からの情報提供を受け、子どもと家族の状況の把握、対応方針の検討を行った上で、一時保護の実施や来所によるカウンセリング、 家庭訪問による相談助言、保護者への指導、里親委託、児童福祉施設への入所措置など必要な支 援・援助を行うこと

・市町村においては、自ら育児不安に対する相談に応じるとともに、市町村に設置する要保護児童 対策地域協議会の調整機関として、支援を行っている子どもの状況把握や支援課題の確認、並 びに支援の経過などの進行管理を恒常的に行い、自ら相談支援を行うことはもとより関係機関 がその役割に基づき対応に当たれるよう必要な調整を行うこと

・警察においては 110 番通報や児童相談所等の関係機関からの情報提供を受け、関係機関と連携 しながら子どもの安全確保、保護を行うとともに、事案の危険性・緊急性を踏まえ、事件化すべき事案については厳正な捜査を行うこと

また今回事件を踏まえて対策の強化を図るべき事項ではトップに「要保護児童等の通告元に関する情報の取り扱い」が記されるなど野田市の船戸結愛ちゃんの反省を意識した内容になっています。

≫詳しくはこちら「児童相談所との連携強化について」をご覧ください。

親向けの支援プログラム

ペアレンツプログラム子供を救済する児童相談所の強化は今後も課題が多く、大きな一歩をようやく踏み出した訳ですが同時に「父母」を対象にした支援プログラムが存在します。

それがカリフォルニア大学のダイバーシティ主任研究員として多くの心理教育プログラムに携わった森田ゆりさんの「MY TREE ペアレンツ プログラム」

▼ペアレンツプログラムの目的▼
子供への暴力はこれまで人として尊重されなかったり痛み・悲しみを「怒り」の形で子供に爆発させる行為。

ペアレンツプログラムでは「セルフケア」と「問題解決力」をテーマに、これらをプログラムによって回復することで悪循環行動の終止を目的としています。

具体的なプログラム構成を見てみると、

①事前面接

②グループセッション【1】(怒りの仮面・感情制御・体罰の6つの問題性など)

③中間面接

④グループセッション【2】(気持ちを語る・自己肯定感の掃除・自分をほめる・もっと楽なしつけの方法など)

⑤終了時面接

⑥同窓会

このペアレンツプログラムの素晴らしいメリットは心理教育を網羅したメソッドを学べることはもちろんのこと【無料】でこのプログラムに申込参加できる、またセッションの最中は小さいお子さんを【無料保育】してくれる点。

「MY TREE」は一般社団法人なので営利目的ではなく会員・実践者の寄附によって成り立っているのです。

デメリットはこのプログラムは全回セッションに参加できることが条件ですが、受講場所が栃木・埼玉・東京・神奈川・千葉・奈良・京都・大阪・兵庫・宮崎といった主に首都圏にしかない点。

受講プラグラムでは森田ゆりさん著で童話館出版から発売されている「気持ちの本」と「しつけと体罰―子どもの内なる力を育てる道すじ」などの気持ちを言葉にして考える大切さや子どもと良い関係を築く方法を学ぶことができるテキストが使用されています。

いきなり参加するのはちょっと…という方や遠方に住んでいるためプログラムに参加できない方は是非、一度読んでみることをおすすめします!

私も一度読んでみましたがそこら辺によくある”テクニック本”などとは違って、心理学に裏打ちされた「なぜ、そうした方がいいのか」「なぜ体罰は害悪なのか」を学ぶことができるので、これまでとは違う深い親子関係を築いていくうえで大いに参考になること間違いなし。

できれば、もっと子供が小さかった時に出会いたかった本でしたね。

気持ちの本

しつけと体罰―子どもの内なる力を育てる道すじ

上手なしつけを覚えよう

教育とは本来「子供の主体性や気持ちを尊重して、分からないことやできないことをどのようにしていったら良いか道標を示してあげること」です。

しかし、父母も共働きをしている家庭が多いので毎日、帰宅してから根気よく子供と向き合うというのは時間的・精神的にかなりハード。

今回の改正防止法を受けて「しっかり”しつけ”しないのは父母の責任」また「厳しい体罰を与えた父母は”懲罰”」。どっちにしても最終責任は親に重くのしかかってくるでしょう。

そんな時に「MY TREE ペアレンツプログラム」のような民間の救済団体があると言うのは本当にありがたいことではないでしょうか。公的な児童相談所が担える役割というのは多くありません。

今後もペアレンツプログラムのような社会貢献度の高い団体や、CSR企業がますます増えてくるような世の中の仕組み作りが必要ではないでしょうか。


ABOUTこの記事をかいた人

ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。