年金2000万円不足問題を示す疑惑の報告書/資産形成で投資をすすめる金融庁

市場ワーキンググループ報告書



5月22日に”案”として金融庁から発表された「市場ワーキング・グループ報告書」ですが、翌日23日には朝日新聞によって大々的に取り上げられたことで各地で「年金デモ」が起こったり、批判の声が相次ぎました。

それは、データや資料を基に算出された試算でみると「1人あたりの年金が約2000万円不足している」と言うもの。

また、麻生太郎金融担当大臣が「2000万円を貯蓄しないといけない」と発言したことで世論にさらに拍車をかける結果に。

今回は疑惑の報告書の概要とその真偽や、資産形成で投資をすすめる理由についてフォーカスします。


金融庁が発表した報告書とは

金融市場5月22日に案として金融庁から発表された金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」のことで令和元年6月3日付けで一般に公開されています。

約20名の有識者メンバーから成るグループで、おもに金融面での対応と高齢社会を取り巻く環境変化や年齢階級別収入の推移などの問題意識を訴える目的で作成されました。

メンバーうち6名は大学教授、7名は金融・投資研究所や投信会社の取締役、そのほかには弁護人や金融専門誌の編集長など。

序文にはこう記されています。

政府全体の取組みや議論に相互関連して、高齢社会の金融サービスとはどうあるべきか、真剣な議論が必要な状況であり、個々人においては「人生100年時代」に備えた資産形成や管理に取り組んでいくこと、金融サービス提供者においてはこう
した社会的変化に適切に対応していくとともに、それに沿った金融商品・金融サービスを提供することがかつてないほど要請されている。

あくまでも本報告書の目的は国民への問題意識の提議、喚起することが目的であるはずなのに「高齢者にどうやって出資させようか?」というニュアンスがプンプンしていますね。

本文は以下のような構成になっています。

大項目 サブテーマ
1.現状整理 高齢化社会を取り巻く環境変化
2.基本的な視点及び考え方 長寿化に伴い資産寿命を延ばすことが必要
3.考えられる対応 個々人にとっての資産の形成・管理での心構え
おわりに
【付属文書1】 高齢社会における資産の形成・管理での心構え
【付属文書1】 高齢社会における金融サービスのあり方

サラっと目を通しましたがこれって”投信協会”や団体が公式サイトで同様の内容を喚起していることがよくありますが問題は「公的な金融庁がこれやっちゃっていいの?」という点。

しかも、将来もらえる年金は厚生年金も国民年金も減少してやがてなくなるのでは?という不安な国民心理がある中でそれをいきなり無視して投資をすすめてしまう訳ですからね。

結局「最後は自分自身の力で貯蓄して何とかしろ!」と言われているのと一緒、弱者は見捨てられ認知症高齢者や独居老人の人たちはどうすれば良いのでしょう。

年金2000万円不足している内訳

実は今回の報告書問題とは別に金融庁は「老後30年間で1500万円~3000万円が必要」という内容の試算を金融審議会市場ワーキンググループ(WG)に提出しています。

その中から1500万円~3000万円必要という内訳を見てみましょう。

▼65歳の定年退職後に夫婦で30年間生活するモデルケース▼

【支出①】(退職後の生活費30年分)=9000万円
【支出②】(住宅修繕・医療費・車買い替え)=500万円~1000万円
【支出③】(介護費用)=0円~1000万円

【支出合計(①+②+③)】9500万円~1億1000万円

【収入①】(基礎+厚生年金)=8000万円
【収入②】(退職金+私的年金)=1000万円~2000万円

【収入合計(①+②)】9000万円~1億円
「高齢社会における資産形成・管理」より引用

これによって1500万円~3000万円不足している、報告されています。

”2000万円”の試算や根拠が薄い

節約前章のモデルケースを見て皆さん違和感を感じませんか?そもそも夫婦の毎月の生活費25万円かかるというのは生活水準にもよるし持ち家を持っている人はローンが終わっていればもっと安い金額で生活している家庭も多く存在するわけで退職金・私的年金も1000万円~2000万円より少ない人の方が多いのでは。

私がもっとも違和感を感じるのは普通の国民の考え方からしたら、足りない分は節約するわけですよ。毎月の生活費に住宅修繕や車の買い替えは最小限に抑えるなどして収入・支出のバランスを取ればいい。

しかも、「高齢社会における資産形成・管理」に記されている毎月の収入・支出の差額「5.5万円」不足額はすでに埋まってきており「4万円」の方が今の現状を反映しているのに、何故「5.5万円」を引用したのか。そもそも前提が、

【夫65歳以上・妻60歳以上の無職で「平均2,484万円の貯蓄」をしている世帯】

リタイアして旅行や新しいスキル・趣味や時間の使い方に挑戦する活発な世代の「老後の30年間を65歳の時の支出額で単純にかけ算して算出」しているものです。

明らかに今の高い生活水準を維持するため「金融庁が高齢顧客に金融商品を購入させたい」という前提のもとに作られたもので、まさに高額な退職金をもらう国家公務員の感覚で作成されているのでしょう。

むしろ、収入・支出の差額「5.5万円」を使用している時点で水増ししてなんとか数字上だけでも「2000万円の不足」という試算表を作りたかっただけに見えますね。

金融庁が投資をすすめる理由



今回、批判が相次いだ「高齢社会における資産形成・管理」では金融庁が資産形成をすすめるだけでもおかしな事だらけです。

しかし、考えるべきはどうして金融庁がそこまでして高齢者の貯蓄を動かしたいのかという点。

世の中にはたくさんの金融商品があふれており、あの手この手で高齢者の貯蓄を引き出そうと躍起になっています。しかし、私も個人投資家として生活していますが「投資=必ず儲かる」ではないということ。

金融市場は常にゼロサムゲームなので市場参加者全ての人が儲かるなんてことはあり得ません。儲かる人がいれば必ずどこかで損をする人がいるから自分の専用口座にお金が振り込まれるのです。

では、そこまで金融庁がすすめる理由は何なのか?私は「銀行を守るため」そのように思えます。仮に金融庁が「節約することで老後の資金不足を防ぎましょう」と注意喚起してしまったら、日本の経済市場は明らかに鈍化してしまいます。

投資に対する絶対的な分母(個人投資家による出資額)が減ってしまうことを日本銀行・投信協会・全国銀行協会も望んでいませんからね。

つまり、昨今の金融リテラシーの向上や若者の少額からの長期・積立・分散を行うことが推進されていますが、明らかにそれらの風潮が”金融庁”という名前を語ってみんなでグルになって行っていると言っても過言ではないでしょう。

余談ですが実は麻生太郎金融担当相は当初、金融審議会市場WGから提出されたものを「政権の意に沿わない報告書は受け取らない」と拒否していました。

今後の選挙対策で国民からの人気を得ることが背景にあったかもしれませんが、偉そうな発言や行動は麻生さんにとっては悪意がない日常的なものであることが多いし、よっぽど民意を理解しているようにも思えますね。

夫婦で老後資金”2000万円”を貯蓄することは可能なのか

カップルこの個人ブログでは「投資×ブログ」による収入を柱に”自分らしく好きに生きる”ことを目的に発信しています。

多くの日本人に金融リテラシーが欠如していることは共感するし、投信による複利効果を考えれば早い時期から積立は始めた方がいいと思っている一人。

しかし、現実的に今の30代・40代で子育てや学費にお金がかかる世代が「2000万円足りない!」と言われたらどんな反応をするでしょうか。

今年10月から消費税は10%に上がるのにサラリーマンの給料は上がらない。定年退職は70歳まで引き延ばされ、基礎年金も厚生年金も先行き不安とくれば容易に貯められる金額ではないことは明らか。

しかし、泣き寝入りをしないためには自分自身への啓発は必要だと思います。副業や投資など間口が広がり今は初期費用のかからないネットを使ったビジネスというのはたくさん存在しているもの。

民意に沿わない金融庁の報告書は疑問ですが、それを”批判するのと同じくらいの熱量で自分の収入口を増やすことを本気で考える”というのが賢い生き方ではないでしょうか。


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ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。