路上ライブが人気を集める理由/うざい・通報魔と闘うビジネスモデルはいかに

路上ライブ

私の友人でプロミュージシャンを目指して20代に3年ほど東京近郊の駅前でストリートライブをしていた人がいます。

もちろん夢があることではありますが、果たしてビジネスモデルとしてはどうなんでしょう。成り立っているんでしょうか?

今回はそんな友人から聞いた路上ライブを行うワケや人気を集める理由、そしてうざい!と罵られたり通報魔に通報されたりそんなアクシデントをご紹介します。


路上(ストリート)ライブとは?

路上ライブ②

なぜ駅前で歌っているのか?

都内、川崎、大阪など1日に数万人~数十万人が行き交う駅前で歌ってる人ってよく見かけますよね。通常、音楽イベントでは歌や演奏を聴きたいファンがチケットを買って指定された日時に指定された場所で聴くもの。

ところがストリートの場合は、聴く気がないことを前提にした人たちに向けて一方的に歌うことで興味がある人を呼び込む行為です。

足を止めたお客さんは歌声に魅了され、最後まで聞き終わるとCDを買ったり話しかけたりその交流の仕方はさまざま。自ら広告塔になって曲をPRすることで色んな出会い・チャンスがあるためやってることはセールスや商談会と同じです。

モデルは「ゆず」や「コブクロ」

すでにメジャーデビューして売れているプロミュージシャンの中にもストリートライブを経験している人は多く存在します。中でも幅広い世代から人気を集めている「ゆず」「コブクロ」はその代表的な例。

彼らのメジャーデビューする前の主戦場は、テレビやコンサート会場ではなく「路上」でした。

ギターと簡易なマイク&アンプを使って彼らがひとたび歌い出せば大勢の人が立ち止まって聞き入り、人が人を呼んで気がつけば100人以上が見ていたわけです。

歌い終わった後に出演するイベントを告知すれば半数以上が足を運び、入場料を払うわけですからようやくビジネスが顔を出してきます。

その繰り返しで絶対的なファン分母が増えた頃には大きな会場での演奏が可能になり、収入が増え続けやがてメジャーデビュー。そして日本中に知れ渡る不動の人気を獲得し、莫大な収益をもたらす成功ビジネスとして憧れの的になっているのです。

ミュージシャンが路上ライブをするワケ

エキサイトしているライブ

①新規ファンの開拓

アーティスト活動を始めた初期の頃は全く認知度がなく存在さえ知られていません。そんな彼らが箱(ライブハウス)に出ることが決まっても見に来るのはせいぜい友人や家族ぐらいのもの。

そこでもっとファンが増えるはず!という自信の表れが「駅前で不特定多数の人に向けて歌う」という行為です。

「2、3人しか止まってくれない日もあれば20人くらい止まってくれる日もあった」この取り組みは日によって立ち止まる数はバラバラだったと友人は言っていましたね。

まぁ、普通に考えたらもともと聴く気がないことが前提だし、人の感情も日によって違うから人の心に隙間がないと歌声は入って来ないわけですからね。

しかし、確実に毎回足を止めてくれる人や話しかけてきたり「応援してます!」と励ましてくれる固定ファンの獲得には地道ながらも効果があったようです。

②CD物販

無料で歌声や演奏を届けたCTA(コールトゥアクション)として最後にフライヤーの配布・CDやグッズの販売を行うことが一般的。

立ち止まって最後まで歌や演奏を聞いてくれた人は興味を持ってる証拠なので次のアクションをかけると話しを聞いてくれたり、買ってくれたりすることが多いようです。

販売だけでなく2、3曲収録したCDをデモ用として無料配布するケースも。友人が言うにはストリートをする上で自分たちを知ってもらうためにはCDの存在は必要不可欠です。

単にファンを繋ぎとめるだけでなくこのあとに紹介しますがたまたま通りかかって興味を持ってくれた音楽関係者にはこのCDがないと自分たちを売り込むことは困難だそうですね。

③パフォーマンス経験値

ミュージシャンが箱イベントに出演するためには知名度がない限り、運営側からチケットノルマを課されます。そのためファンの多いミュージシャンならまだしもそうでない場合は、金銭的な理由から月に1、2回が限界。

そのため、貴重なパフォーマンス経験を積むためにストリートと言うのはうってつけの場所です。度胸を身につけたり誰一人立ち止まらなくてもいつも通り歌う精神力を身につけるには最適。

一年間に10回程度の経験値と100回以上の経験値ではパフォーマンスに圧倒的な差が生まれます。だから、ストリートという場所を選択することは短時間で成長するための道のりでもあるんですね。

④音楽芸能関係者にPR

これは副次的な効果ですが人が行き交う駅というのは必ず芸能事務所・経営者・レコード会社関係のいわゆる”音楽関係者”の人間も利用するものです。

そこで隅っこで誰も足を止めることのないミュージシャンであれば気にもかけませんが、駅前に100人以上が立ち止まって聞いている人がいれば音楽関係者は”原石かも”と考えるきっかけを与えることに。

友人の実体験ですが新橋駅前で実際に足を止めて声をかけてくれた優しいおじさんが実は権力者で、そのまま関連するレコード会社の社長に連絡を取って「一度聞いてみてくれないか?」と夢のような話しもあったそうですよ。

新橋近くと言えば「DEEN」が所属する会社で有名な”あの会社”ですが、実際に会社に足を運び自社スタジオで2、3曲歌を披露したそう。

結果は思うようなものではなかったそうですがでもストリート演奏をしてなければこの出会いは普通はないもの。だからこそここぞと言うときにはすぐにCDと連絡先を手渡せるように準備しておくことの重要さを語っていました。

路上ライブはお金や手間がかかる

ギターとアンプ素人が実際にストリート演奏をしようと思っても何から準備していいか分からないものです。

そこで実際にストリートでの演奏を3年ほどやっていた友人にざっくりと聞いてみました。もちろんこれはほんの一例ですが、その概要が少しは見えると思います。

①機材の購入

まず、演奏スタイルにもよって左右されますが通常”ギター”にしても”歌もの”にしても音を遠くに響かせるマイクは必要不可欠。

簡易なアンプスピーカーが欠かせないわけですが屋外には電源コンセントはありません。そこで小型の発電機を持ち込みそこに繋いで電源確保していたそうです。

また、楽器の生演奏をせずに”歌もの”と言われるCD音源を流してそれに合わせて歌うスタイルや中にはDJセットを持ち込んで流すケースも。

通常、アンプもマイクも使うのであれば”ミキサー”と呼ばれるスピーカーと接続して音のバランスを取る機器が必要になります。

値段もまちまちですが100m先まで響かせようと思ったら10万~20万程度のスピーカー&ミキサーセットが必要。それに加えてマイクとケーブル類、販売用のCD制作(自主制作なら500枚10万ほどで作れるそう)にチラシ・看板など合わせると最低でも30万程度はかかるでしょう。

②機材の運搬

いざ、機材を揃えたら次に考えないといけないのは”運搬方法”です。特にアンプやミキサーは重く10kg以上するものが多いため、運搬には車を使用するか頑丈なキャリーケースが必要になるでしょう。

複数人いるミュージシャンなら問題ありませんが運搬に必要な人手もいるので、それを考えると車がベター。もしくは電車で運搬する方法もありますが人目にさらされやすく運搬にも量力が要りますね。

しかし、演奏中は車を路駐していると切符を切られるので駐車場を確保しておくことも忘れてはなりません。1回30分なら駐車料金1,000円+ガソリン代と言った感じでしょうか。

③発電機のガソリン代

友人によるとアンプやスピーカーに繋ぐ”発電機”は大きさに関わらずガソリンで駆動するため、演奏途中で止まるのは避けるためには毎回ガソリンスタンドで給油してから駅前に向かっていたそうです。

容量は小さいものですが普通にスクーターと同じくらいの消費量で減ると言っていたので一回の給油で500円~1,000円はかかるでしょう。

④使用許可申請

公共の場である駅前の広場や通路を利用するためには本来は”使用許可証”を警察に申請して取得する必要があります。これはよく渋谷109前で有名アーティストがやってきたりすることがありますが、これらは公の活動なので必ず芸能事務所が使用許可を取っているもの。

しかし、友人によると「はっきり言って素性の知れないミュージシャンに使用許可を出すことはない」とのこと。

人が多い場所では通行の妨げになったり飲食店に迷惑がかかることも充分考えられるので、許可を取ることが難しいため多くのストリートミュージシャンは許可を取らずに「通報されて止められたら仕方ない」と覚悟を決めて行っているそう。

確かに許可を取って決まった場所で決まった時間に演奏やるとなるとかなり制限されることを考えれば効率的には止められるまでの間、たくさん演奏した方がいいのは明らかですよね。

ちなみに警察による指導は初めてのケースでは「苦情が入っているのですぐ止めて下さい」と注意されるだけだそう。何回も注意される常習犯の場合は、派出所に連れていかれて調書を取られる程度で罰金・刑罰は経験したことがないそうです。

路上ライブが人気を集める理由

リラックス

①ミュージシャンとの距離が近い

路上ライブでもっとも魅力として挙げられるのが”ミュージシャンとの距離が近い”ということ。

興味がないミュージシャンなら足を止めることなく素通りしていく訳ですが、売れているかいないかに関係なくファンになった人はお目当てのミュージシャンをわずか2m~3mの位置で見れるわけだからこんな嬉しいことはないですよね!

箱で見る場合は歌や演奏に加えてMCトークなどある程度、予定調和のパフォーマンスですがストリートではどんなハプニングがあるか分からないためミュージシャンの意外な一面を見たり”生身の部分”を垣間見ることができます。

反対に実力に自信があるミュージシャンの場合は、箱や機材による”ごまかし”がきかない環境下で最高の生パフォーマンスを聞くことができます。

②無料で聴ける

路上での演奏と言えばよくギターケースを開いて小銭入れにしている光景を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、基本的にプロを目指している人は歌・演奏に対する対価を求めてきません。

また、いつもは箱でチケットを買って聴いている人にとっては無料(タダ)で聞けるというのはとてもメリットを感じてしまうでしょう。

駅前の待ち合わせで待ち時間がある時に興味のあるミュージシャンだったらフラっと立ち寄って聞いていると、暇つぶしにももってこいですね。

③疲弊した心の隙間に歌声が入ってきて魅了される

ファンじゃない人は理由があって駅を利用している訳ですが、イヤホンでもしていない限り勝手に聞かされるので迷惑な人はうっとおしいと感じてしまうかもしれませんが、人は人生にアクシデントがあると日常でもなかなか傷が癒えないものです。

仕事で失敗して落ち込んだ、恋人と別れた、大切な人が亡くなってしまったなど。

そんな時に心に染みる歌声が聞こえてくるといつもなら気にしなかったのに心に染みて立ち止まって聞き入ってしまうことがあります。

そんな心理状態であれば受動的に聞かされることで抵抗することができないまま、優しい歌声や素敵なメロディが感情を刺激すれば涙が出ることだってあるでしょうね。

うざい!と言われたり通報魔に通報される

警察に知らせる駅前で歌っていると全ての人が友好的ではないことは確かです。世の中には色んな考え方を持った人がいるので当たり前といえばそうなのですが、本当にそのことを実感したと友人は語ってくれました。

大音量で演奏や歌が流れてくればお金を払って間借りしている飲食店は妨げられることを極端に嫌います。中には理解ある人で「頑張りなさいよ」と言ってくれる素敵な人もいるようですがそれは稀。

ほとんどの場合が監視され演奏を始めた瞬間に派出所に通報する”通報魔”によって歌うことは叶わぬ夢となってしまうでしょう。

それだけでなく新宿などの繁華街は駅前にヤクザ・暴力団関係者による”縄張り”があります。よく路上で再利用の雑誌・漫画・新聞を売っているおじさんっていますよね。

あの人たちはヤクザや暴力団に”場賃”を払って営業しています。当然、そんな人たちの前で演奏を始めて邪魔をすればすぐに関係者に連絡が入り”こわもて”の人が脅しをかけてくることもあったそう。

「路上ミュージシャン」と言うビジネスモデル

さて、ここまで路上ミュージシャンが路上で演奏・歌を始めるまでにかかる準備と費用、そして人気を集める理由や通報魔について紹介してきましたが、ビジネスモデルとして考えた場合はどうでしょうか。

年中ストリートライブを行っているミュージシャンは30分ほどの演奏でCDを20~30枚ほど売る人もいるそう。

単純にCD1枚が1,000円だとしたら、

【1日あたり】1,000円×20枚=20,000円

【1ヵ月】20,000円×20日=400,000円

この数字だけ見るとアンプ&ミキサー&マイクを初期費用として購入しておいてもそれなりに稼げることになる訳ですが、かなりの重労働ですよね。だって毎日歌うって喉の負担は大きいし、体調を維持することも大変です。

それにやりたい時に天気が良いとも限らないし、病気で突然入院にでもなればその間は収入が全くないワケですからね。

しかし、現状に満足せずもっと高みを目指すミュージシャンにとっては①新規ファンの開拓、②音楽関係者とのコネ作りが期待できる以上、価値は大きなものに違いありません。

ビジネスモデルとしては成功するか否か不安要素が多いですが、数々のメリットを考えるとプロのミュージシャンを目指す方にとってはもっとも魅力的で地道に実力・ファン獲得できる”最善の方法”と言えそうです。


ABOUTこの記事をかいた人

ブログ・投資・ビジネスをメインテーマにした俳句ブログ『Office Exitの俳句』編集者。ブログ運営→投資→ブラック企業から独立。ブログ収益360万、投資収益450万。趣味は俳句。特技は俳句。仕事も俳句。NHK全国俳句大会『入賞』、枕草国際俳句大会『入賞』、子規顕彰全国俳句大会『入賞』、福岡総合俳句大会『優秀賞』。